コラム

競争相手は誰か ~プロや発展するテクノロジーと戦うのか、共存するのか

染谷昌利

副業が解禁されることにより、事務処理能力が高い、特定ジャンルの知識や経験が豊富といった得意分野を持った人の能力が欲しい企業は、正社員という雇用形態にこだわることなく、従量課金制や成果報酬型での雇用(契約)を推進させていくことが予想されます。

一方、独自性を持たない既存の従業員の給与額が維持され続けるとは限りません。

成果を生み出せる人間が重宝され、そうでない人は淘汰されていく厳しい競争社会になる可能性もあります。本業でもプロになっていないと、職を追われてしまう、あるいはいつまで経っても収入が増えない時代に突入していくわけです。

「副」業と書くとサブの収益源を得るイメージが強いですが、これからの時代は「複」業が当たり前になってきます。本業で生活費を稼ぎ、副業でお小遣いを稼ぐという時代は終わり、パラレルワーカーの増加によってプロの知識が副業の世界にも流れ込みます

弁護士を代表とした国家資格を取得している士業、語学が堪能なマルチリンガル、株だけでなく為替やヘッジファンドに卓越したトレーダー、各業界のプロフェッショナルが副業に取り組みだし本物の知識を発信し始めたらどうなるでしょうか。アマチュアレベルの知識で稼げていたものがプロの参入によって競争が激化し、退場者も増えてくることが想定されます。

現代はライバルが分かりづらい時代になっています。

過去は自動車メーカーの競合は自動車メーカーでした。ゲームメーカーの競争相手はゲームメーカーでした。トヨタのライバルは日産やホンダであり、任天堂のライバルはセガやソニーでした。

それがいまは、自動車メーカーのライバルはAppleやGoogleになっています。IT企業が主導している自動運転の技術が、自動車メーカーに与えるインパクトは少なくありません。ゲームメーカーのライバルはスマートフォンです。あの小さなデバイス内に、無料で楽しめるエンターテインメントをいくらでもダウンロードできる時代なのです。

さらに忘れてはならないのがテクノロジーの進化による失業です。

テクノロジーが発展し業務が効率化されればされるほど、経済成長の助けになり、そして人間の雇用を奪います。技術やインフラの発展によって便利さは増しますが、そこに単純労働は発生しないのが現在の社会の特徴です。

例えば携帯電話の普及により、電話帳は役割を終えました。そして人間の記憶力も奪っていきました。昔は友人の電話番号を10件は覚えていたはずなのに、今では自宅の電話番号だって怪しいもんです。

例えばインターネットの普及により、自宅に百科事典を置いておくことはなくなりました。百科事典を一式揃えると数十万円したのですが、それでも売れてたんですよ。今では図書館でしかお目にかかれません。

例えばAmazon。書店はもちろん、アパレルショップや家電量販店の存在を脅かしています。

iPhoneを中心としたスマートフォンの普及によって消えた産業はなんでしょうか?

代表的なものは目覚まし時計です。mp3プレイヤーも消えました。カメラの性能はコンパクトデジタルカメラも必要ないレベルになっています。下手したらパソコンも危ういです。自動車のナビゲーションシステムもGoogleマップで代替可能です。

医療ロボットの発展により、外科医の仕事すら無くなるかもしれません。現に手術支援ロボットを活用した手術の正確性・安全性は立証されています。法律さえ整えば、ロボット手術が一般的になる未来も簡単に予想できます。

他にも、自動運転の発展によりタクシードライバーの労働機会が失われます。
ドローンの進化により、宅配員の労働機会が失われます。
airbnbの浸透により、ホテル業界の労働機会が失われます。
ロボアドバイザーの普及により、証券会社の営業やトレーダーの必要性が薄れます。

ざっと思いつくだけでもこれだけのインパクトがあるわけです。

AIが人間の仕事を奪うと言われがちですが、過去にも機械が人間の業務を肩代わりすることにより、人間が働く場は減少しているのです。栄華を極めていた産業が、テクノロジーの進化によって一瞬にして消えていくことは珍しいことではありません。それが破壊的イノベーションです。重要なのは、時代の変化に気づき、いかに対応できるかという点なんです。

では、特別な能力を持たない会社員はジリ貧なのでしょうか。

違います。インターネット副業を勧める3つの理由で「情報発信力を身につけることによって人生は大きく変わります」と書きましたが、情報発信力はこれからの時代の必須スキルになります。

知識があっても、それを上手に伝えられなければ、その価値は無いも同然です。だからこそ、競争が激化する前に、テクノロジーが仕事を奪う前に、情報発信のプロフェッショナルになっておく必要があるのです。

情報を必要とする読者層を認識し、その層が理解できる適切な言葉を選び、丁寧に伝えていく。専門家の発する情報は一般人には難しすぎます。知識層と学習層の間に入り、わかりやすく翻訳する。これこそが情報発信者の役割です。

情報発信力があれば無駄な競争ですり減る必要などなく、共存が可能なのです。発信した情報の価値が高ければ高いほど、収益に結びつけることも可能です。コミュニティを構築することもできます。

見えない競争相手としのぎ合いを続けるのか、自分の土俵を作り出して数多くの専門家と共存していくのか、どちらの世界を選ぶかはあなた次第なのです。

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