複業新時代のはじまり

2017年後半から大手企業が副業解禁の動きが活発になりました。この流れは政府の推奨する「働き方改革」の一環で、特に2018年1月に厚生労働省が発表した「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が大きな影響を与えていると考えられます。

厚生労働省のウェブサイト内では『厚生労働省では、「働き方改革実行計画」(平成29年3月28日働き方改革実現会議決定)を踏まえ、副業・兼業の普及促進を図っています。』と謳われており、労働行政を司る省庁の総意で副業の拡大を進めています。

特に影響の大きい変化として挙げられることが「モデル就業規則」の変更です。常時10人以上の従業員を使用する使用者は、労働基準法第89条の規定により、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません。ゼロから独自の就業規則を作る会社もありますが、多くの企業は厚生労働省が提供している「モデル就業規則」を参考にして自社の就業規則を作成しています。

このモデル就業規則から、「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という旧規定が削除され、新たに14章「副業・兼業」という章が設けられ以下のような条文が加えられました。

(副業・兼業)
第67条労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
2労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行う
ものとする。
3第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、会
社は、これを禁止又は制限することができる。
①労務提供上の支障がある場合
②企業秘密が漏洩する場合
③会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
④競業により、企業の利益を害する場合

あくまでもこの条文はモデル就業規則ですので強制力はありませんが、国主導によるガイドラインの改定は多くの企業に「副業禁止規定」の再検討をさせるきっかけになっています。

副業・兼業の促進に関するガイドラインのパンフレットには、副業・兼業のメリット、留意点について以下のように述べています。

【労働者】
メリット:
①離職せずとも別の仕事に就くことが可能となり、スキルや経験を得ることで、労働者が主体的にキャリアを形成することができる。
②本業の所得を活かして、自分がやりたいことに挑戦でき、自己実現を追求することができる。
③所得が増加する。
④本業を続けつつ、よりリスクの小さい形で将来の起業・転職に向けた準備・試行ができる。
留意点:
①就業時間が長くなる可能性があるため、労働者自身による就業時間や健康の管理も一定程度必要である。
②職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務を意識することが必要である。
③1週間の所定労働時間が短い業務を複数行う場合には、雇用保険等の適用がない場合があることに留意が必要である。

【企業】
メリット:
①労働者が社内では得られない知識・スキルを獲得することができる。
②労働者の自律性・自主性を促すことができる。
③優秀な人材の獲得・流出の防止ができ、競争力が向上する。
④労働者が社外から新たな知識・情報や人脈を入れることで、事業機会の拡大につながる。
留意点:
①必要な就業時間の把握・管理や健康管理への対応、職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務をどう確保するかという懸念への対応が必要である。
企業側からすると、副業を禁止することで能力の高い社員の離職を促進してしまう可能性があります。優秀な人材であればあるほど引く手あまたで、なおかつ少子化による労働力不足も相まって、条件の良い企業に転職してしまうからです。逆に副業が一般化されることで、他の会社に勤めている優秀な人材を自社に招き入れることも可能になります。

労働者としては収入源が一社の給与だけというのは、先行きの見えないこの時代では大きなリスクになります。

突如として倒産する企業もあれば、業績不振でリストラを断行する企業もあります。複数の収益源を作っておくことで、収入がいきなりゼロになることを防ぐことができるわけです。もちろん複数の収益源があるということは、収入の絶対額が増えますので人生の選択肢を増やすことにも繋がります。

今後、日本は労働力不足のフェーズに突入していきますが、優秀な人材は複数の仕事を請け負いつつ自分の人生を楽しんでいけるでしょう。逆に準備の足りない人はまったく仕事がなくなる世界になるかもしれません。

2018年2月に公表された「兼業・副業に対する企業の意識調査(リクルートキャリア)」では、正社員に兼業・副業を容認・推進している企業は全体の28.8%という低い数値でした。2018年6月に公表された「副業・複業に関する調査(アデコ)」でも、副業を容認・推進している企業は全体の23%でした。現状は副業・複業について理解の深い企業は決して多くありません。

しかしながら、2017年末から2018年にかけて、ソフトバンクやエイチ・アイ・エス、ユニ・チャームやコニカミノルタ、そして新生銀行といった名だたる企業が副業を解禁しています。政府が旗を振り、大手企業が乗り始めたこの流れはさらに早まっていくことが予想されます。

2012年から社員の副業を認めているサイボウズ社では、2017年に新たな採用制度である「複業採用」を始めました。複業採用は、サイボウズ社での仕事を「副業」として働きたい人材を募集する制度で、「100人いたら100通りの働き方」を提唱する同社の多様な働き方を体現しています。

企業側も新しい、多様な働き方を模索しながら進めているわけです。その波に乗り遅れないよう、気づいたら仕事がなくなっていた!なんてことにならないよう、今から準備をしておく必要があります。

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